ゆるくいろいろ

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J.D. Salinger The Catcher in the Rye

年明け早々にブログを更新するとは思いませんでした。が、先程ようやくサリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」を読み終えたので感情と感想が新鮮なうちに書き留めておきたい。英語で読んだのでタイトルもローマ字で。

 

この年末年始、かなり憂鬱な気分で過ごしていました。自分と他人との溝が広がっていくばかりで、とにかく社会に対するちいさな怒り、疎外、孤独を感じている。この本をいつ読み始めたのか思い出せないくらい初めてページをめくった日からはたくさんの時間が経ったんだろうけど、この最近の精神状態の中で読み終えることができてよかった。

 

主人公Holdenの喋り方が好き。というか、サリンジャーの表現が好き。すこし前に読んだSally Rooneyの本の主人公にすこし似ているかもしれない。

Holdenはとにかく色んなディティールに注目する(してしまう?)人で、それに対しての意見というかこだわりがかなりあると思うんだけど、目にしたものとその瞬間感じたことを全て書いてくれているところが好きだ。私は割といろんな物を抽象的に捉えるので、彼みたいな思考回路になることが無い。だから新鮮だったんだけど、面白かったのは、物事の厳密な捉え方は違っても世界/社会に対して感じることがすごく近かったこと。ちがう道を歩いておなじ場所に辿り着いたかんじ。

 

彼が繰り返し言っていた"phoniness"に対する嫌悪感。とても共感できるところがある。周りの人のほとんどがすごく薄っぺらく見えてしまって、誰も物事の本質になんか興味を持っていない、それに対する苛立ち。私は基本的に他人を嫌うほど人に興味は持てないけど、彼らを見下す自分もきっと存在している。

人が、人とのコミュニケーションが嫌いでいくらでも平気で嘘をついてしまうところとか、同時にやっぱり人が好きで愛したくて、誰も憎めないところとか、自分にすごく似ているのかも知れない。人々のphoninessを揶揄する半面、話せる相手が居ないことに絶望する。最近はその孤独に寂しさすら覚えはじめました。ついに私も人間になれるのですね…。厨二病はさておき。

 

特に終盤の主人公から感じ取れる葛藤や絶望を単なる思春期とかそれこそ厨二病で終わらせたくない。ジャンル的にこの小説はcoming-of-ageに分類されるらしいが、果たしてそうなのか?大人になればこの数々の悩みと疑問に対する答えは見つかるのか?そういう類のものから逃げる方法に縋ったり、見て見ぬふりをしたりして答えを見つけた気になるだけではないのか?

そもそも大人が何なのかは分からないが、成人した今でも答えは見つからないどころか、いろんな知識が増えれば増えるほど、考えれば考えるほど、何も分からなくなっていくしこれが精神の成熟か何かによって解決されるとは思えない。

 

最後メリーゴーランドに乗ってただひたすら回る妹を見るHolden。結局、私たちは大切にしたいと思う人たちに救われるのかも知れない。

 

という訳ですこし暗い気持ちでの年明けではありますが、今年も大切な人たちをいっぱい愛したいです。そして常に感じる孤独については、人で埋めることはやはり難しそうなので、もっと本を読んだり映画を観たりして新しい刺激を取り入れます。次は何を読もうかな。

とりあえずAlma Gluckが歌うComin' Thro' The Ryeを聴きます。サイコパス観たいな。